「サラン・・・」
低く、くぐもった声で自分の名を呼ばれ・・・
どこか安堵している自分がいる。
何故?
不思議な感覚。
この男のどこに包み込むような優しさなどあろう!
パク・チャンイ・・・
そう言えば、うらぶれた酒場のカウンターに手配書が貼り付けてあったような・・・
命を殺めることに何の戸惑いを持つ事なく、
まるで虫けらを捻り潰すように残忍な殺戮を繰り返している奴ら。
その頭目、それが、パク・チャンイという男。
まだ、若い・・・
だが、従う輩は、一筋縄ではゆきそうにない面構えばかり。
それが、この狂気に満ちた冷たい瞳の前では震え上がると言う。
何もかも奪い尽くして駆け抜けてゆく、馬賊の頭目。
それなのに・・・
私には、哀れに見える。
男の背中に透けて見える・・・抱えている悲しみが私を惹き付ける。
瞳の奥深くに眠る悲哀が恐怖を拭ってくれる。
一緒にいたい・・・
自分の中にある悲しみと共鳴しているこの男の闇を、救いたい。
私になら出来るかもしれないなどと、そんな不遜な思いを抱いた愚かな自分がいた。
「何を考えている?」
「えっ!」
「今、お前が考えている事を当ててやろうか・・・」
「俺のことだろ。」
「詮索無用だと言ったろう!」
「わからなければ・・・いいか・・・容赦はしない!」
「・・・」
「いいな!」
そう言い放つと、今一度、切り裂くように身を沈めて来た。
私の運命・・・
この男と共にあるのだろうか?
生きる・・・
そう、生きるしかないと肌で感じていた。
二人で・・・
To be continued.